むねをひらく









――昔から、漠然とした疑問としてソレはあった。




最近いろいろあったし、人を疑ったりしてからふと、改めて思ったのだ。



そりゃあ、人が付き合っていく上で心情的な付き合いはあるものだから、

疑ったら切りはないんだけれども、疑わないわけにはいかない。




だから、思わず君に訊ねてしまった。





「友情ってなんなの」




それは、あまりにも漠然としているもの。

抽象の象徴ともいえるソレ。



この世界が誕生して、人が誕生して何億何千万という時が流れて、

そんな中でもときどきあらわれる問。



逃れられない無限の疑問。

止まらない癇癪と傲慢。





人の汚さを定義するのよりも難しい。


汚れた部分を見るのは、美しい部分を見るよりも簡単だから。






――疑うって、そりゃ。







すると君は、想像していたよりあっさりと、「しょうがないな」と言った。



そして、ちょっと頑張って、友情を取り出して見せてくれた。




そして、ちょっとふう、ってため息ついて、「どうぞ」って言った。








個人的な、偏見的な想像だったけど。



ぼくは勝手に、君が言う「友情」ってのは真っ黒なボールみたいに思っていたんだ。





ブラックボックスの、丸いバージョン。






でも、実際に君が見せてくれたソレは、なんと液体だった。



宙に浮いているから丸に見えるけど、

そわそわとさざ波立つように震えている。




そして、黒ではない。






鈍い色というか、なんというか不思議な色だ。

悪いたとえかもしれないが、古い布みたいな、黄ばんだ色。


でも、光っているように見えて、何色にも見えてくる。



これは一体何色というの?と尋ねてみたら、

君は「虹色」と答えた。




本当の虹色っていうのは、こんな色を言うのだそうだ。




きれいだろう、って君は自信満々に言ったけど、僕はソレを見ていたのであまり聞いてなかった。





絵にかいたような、3Dのような。

とけた鉛のような、輪郭がぼやけた霧のような。

暖かそうな雰囲気だけど、これは熱すぎやしないかと不安になる熱波。


能面のような、般若のような、道化のような。


ふしぎな可笑しさをもたらすソレ。



僕がじっと見つめると、ふるんと、凍えるように弛んだ。



僕の視線が寒すぎるんだろうか。






 どうやら、君の友情とやらは生きているようだ。




そう呟くと、君は、はにかむように照れた。






「触ってもいい?」




手を伸ばしてみた。


手をつかまれた。




「駄目だよ。まだ完璧じゃないから」











僕は君を見た。


君は僕を見た。





 君は僕を見て笑った。







「もういいよ。触っても」






僕は何だかうれしくなって、


でも壊すのがいやだったから、人差し指で、そっと虹をつついた。







僕らの友情は、虹の上に僕らを映して心地よく弾む。







君が僕と笑った。


僕が君と笑った。







果てのない疑問。

抽象の偶像。







 こんどはぼくのばんだって、きみがわらった。














 END

▼ (2008/10)


おひさしぶりです。


大学の先生に「抽象ってのはなんだ」と聞かれて「曖昧なもの」って答えたら
おしいって言われました。
 ちなみに先生の説明は意味がわかりませんでした。
ちなみにそんな先生は英語の担任です。


だれだっけ
友情っていうのはyouとジョーなんだって言って鼻で笑われてた人がいた